上野にある国立西洋美術館が今年開館60周年に当たるということで、色々なイベントが催されている。
この国立西洋美術館の開館には、「松方コレクション」という西洋絵画の収蔵品が大いに係わっているらしい。
NHKも例外でなく、これに関わる番組をいくつか放送していた。
その一つが「日曜美術館」。Mが録画をかけていた。
しかし当初Kは、この事にあまり興味がなく、Mが見る番組を横目で見る程度であった。
ところが、思わぬことで事態が替わることになった。
発端は図書館である。
2週間前のこと、開店休業の身であるから、いつもは避ける小説でも借りようと思い立った。
話題の本が平置きしてあるコーナーがあって、その中ででたまたま目に入ったのが、原田マハ著の”美しき愚か者たちのタブロー”という長い名前の小説。
かなり昔、原田マハのもので”奇跡の人”という小説を読んだことがある。事実?と思い込むくらい筆力のあるフィクションであったことを思い出して、借りてみることにした。
同時にいつものように、雑誌も借りた。文藝春秋7月号。
小説は「松方コレクション」に係わった人の話であった。吉田茂が登場したりなどする。
優れた筆力もあって難なく読み進んでいたのだが、章が代わって、時代が昔に戻ったり、登場人物が錯綜したりなど、理解に苦しむ場面が発生してきて、一時読むのを止めていた。
そんな折り、文藝春秋を開く気になった。目次を見る。
原田マハ氏による文で”「松方コレクション」超入門”という文字が目に入った。
8ページにわたる寄稿で「松方コレクション」が何たるものか詳述している。
「松方コレクション」はかなり数奇な運命を持っていること、自分の書いた小説がどんな立ち位置にあるかが読み取れた。
予備知識を得て、再度小説を読み進める気が起きてきた。今度は理解できる。
一気に最後まで読み終えた。
最終ページに「この物語は史実に基づくフィクションです」とはあるが、多くの部分が事実なのであろう。
正に「事実は小説より奇なり」である。
これら二つの読みもので「松方コレクション」にがぜん興味がわいてきた。
改めて「日曜美術館」を見直してみる。
面白い話題と優れた映像を鏤(ちりば)めた好番組であった。
余談;小説の中に松方幸次郎の生い立ちを記述した個所がある。
松方幸次郎は明治時代に総理大臣を務めた松方正義の3男であるが、なんと正義は15男7女の子沢山らしい。この記述は史実で、まさかフィクションではなかろう。
|